Europa Universalis Vはつまらない?面白い? レビュー・感想まとめ

Europa Universalis V(ヨーロッパ ユニバーサリス V、以下EU5)は、中世後期から革命の時代までの約500年間にわたり、一つの国家を導いていく超本格的な歴史シミュレーションゲームです。このジャンルの第一人者であるパラドックス社が開発を手掛けています。本作の最大の特徴は、前作EU4で中心的だった「マナ」と呼ばれる抽象的なポイントシステムを廃止し、よりリアルな「人口」の動態と「経済」のシミュレーションを国家運営の核に据え直した点にあります。数百もの国家から一つを選び、詳細に作り込まれた外交、洗練された経済モデル、そして現実味を増した軍事・兵站システムを駆使して、自国の歴史を紡いでいくことになります。良くも悪くも、EU4とは大きく異なる、より複雑でシミュレータ志向の強いゲーム体験へと変貌を遂げているのです。

EU5の魅力・面白いと評価されるポイント

EU5が「面白い」と高く評価されている最大の理由は、EU4までのゲーム的な(抽象的な)システムから脱却し、「より深く、よりリアルな国家経営シミュレーション」へと大きく進化した点にあるようです。特に経済と内政のシステムが根本から見直され、これまでは「戦争の準備期間」と見なされがちだった「平時」のゲームプレイそのものが、非常に魅力的になったという声が多く上がっています。具体的な魅力は以下の通りです。

  • 奥深い経済シミュレーション
    同社の別タイトルであるVictoriaシリーズの要素を取り入れたとされる経済システムが、特に好評を博しています。EU4のように決まった建物をただ建てる(スパムする)のではなく、国内の人口や産業が様々な「商品」を必要とし、その需要と供給によって市場価格が動的に変動します。資源を確保し、インフラを整備し、交易ルートを管理するといった平時の経済運営そのものが、非常に奥深くやりがいのあるものになっています。
  • 「マナ」の廃止と「人口」の導入
    EU4で賛否両論あった「マナ」(統治点、外交点、軍事点)が廃止されました。代わりに、国家の基盤となるリアルな「人口」とその管理(文化、宗教、階級など)が国家運営の中心に据えられました。これにより、ゲーム的なポイントのやり繰りから解放され、より現実的な国家の発展をシミュレートできるようになったと感じるプレイヤーが多いようです。
  • EU3への原点回帰
    一部のシリーズ古参ファンからは、本作はEU4の「+10%」のような補正(Modifier)をひたすら積み重ねるゲーム性から脱却し、EU3のような「複雑なシステム同士が有機的に連動するシミュレーション」に立ち返った、と好意的に受け止められています。
  • 圧倒的な奥深さと高い到達点
    「他のパラドックスゲームが車の計器盤なら、EU5は飛行機の計器盤だ」と評されるほど、システムが複雑で奥深いものになっています。その分、参入障壁はパラドックスゲーム史上でも屈指の高さですが、一度システムを理解し始めると「国家経営シミュレーターの真髄」を味わえる、と絶賛する声もあります。

EU5の残念な点・つまらないと感じる可能性

多くの称賛の声がある一方で、「つまらない」「おすすめしない」という非常に厳しい評価が下されているのも事実です。その主な理由は、シミュレーションとしてのリアルさを追求した結果、「ゲーム」としての楽しさや、プレイヤーが歴史に介入する「主体性」が失われてしまったと感じられる点にあります。特にEU4を長く楽しんできたファンほど、期待していたゲーム性とのギャップや、現時点での「未完成」な部分に強い不満を感じているようです。

  • 意味のある「選択」の欠如
    「素晴らしい歴史シミュレーターだが、良いゲームではない」という辛辣なレビューが象徴するように、国ごとの個性や戦略の幅が失われたという指摘が目立ちます。EU4では国ごとに異なる戦略(例:イギリスで制海権、オーストリアで外交結婚)がありましたが、EU5ではどの国を選んでも、結局やることは「内閣効率を上げる」「市場を建てる」といった最適化作業の繰り返しになりがちです。これにより、プレイヤーの「主体性」が感じられず、単調な作業をさせられていると感じるようです。
  • 単調なゲームプレイと微々たる補正
    社会価値観や法律、技術開発といったシステムが、EU4のように国家の方向性を大きく左右する重い選択ではなく、「+2.5%」のような微々たる補正の集まりになってしまった、との批判があります。これにより、選択を間違えるリスクや戦略的なジレンマがなくなり、ただ最適解を選んで収入が増えるのを眺めるだけの、退屈なゲームループに陥りやすいとされています。
  • 深刻なコンテンツ不足と「死んだAI」
    リリース直後ということもあり、フランスやイギリスといった一部の大国を除いて、その国独自のイベントやミッションといった「フレーバー(独自コンテンツ)」が圧倒的に不足しています。さらに深刻なのがAIの挙動で、「1400年代を過ぎるとAIが全く動かなくなる」「AIが新しい経済や制御力システムに全く対応できていない」といった報告が相次いでいます。これにより、マップが何百年も変化せず、プレイヤーだけが一方的に強くなる展開になりがちです。
  • ヨーロッパ中心主義的なマップデザイン
    一部のレビューでは、天然の良港がヨーロッパや北米に不自然に偏って配置されているなど、「ヨーロッパ中心主義的」で植民地主義的な視点に基づいたマップデザインになっている、というイデオロギー的な観点からの批判も見られました。

まとめ:Europa Universalis Vはどんな人におすすめ?

Europa Universalis Vは、結論として「手軽さや爽快さよりも、手応えのある複雑なシミュレーション」を心の底から愛する、熟練のストラテジーゲーマーにこそ挑戦してほしい作品です。EU4のゲーム的なシステムに物足りなさを感じていた人や、Victoriaシリーズのような経済・人口シミュレーションが好きな人には、本作の深い国家経営システムが非常に魅力的に映るでしょう。「飛行機の計器盤」を一つ一つ理解し、操縦するような、複雑で奥深い体験を求めている方には強くおすすめできます。
ただし、現時点では多くの重大な課題を抱えていることも事実です。EU4のような国ごとの多彩な戦略や、アグレッシブなAIとのダイナミックな戦争展開を期待している人には、現状のEU5は「退屈」で「単調」に感じられる可能性が非常に高いと言わざるを得ません。コンテンツ不足やAIの問題は深刻であり、今後のアップデートやDLCによる大規模な改善が不可欠です。
パラドックス社のゲームは、発売から長い年月をかけたアップデートで「完成」するのが常です。EU5も今はまだ荒削りですが、そのポテンシャルは非常に高いと評価する声もあります。「未完成な傑作の原石」であることを理解した上で、じっくりと腰を据えてプレイする覚悟がある方、あるいは数年後の完成を待てる方にこそ、おすすめしたいゲームです。

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